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緊急寄稿 GLORY14「時代は動いている」

  • News
  • Mar 9, 2014

時代は動いている。

『GLORY14』(3月14日・ザグレブ)を観て改めてそう思った。時代を最も激しく揺れ動かしたのはアンディ・リスティを劇的な逆転KOで下してGLORYライト級王者となったデビット・キリア。知っての通り、リスティは『GLORY12』(2013年11月23日ニューヨーク)で行なわれたライト級トーナメント決勝で絶対王者ジョルジオ・ペトロシアンをKOで破って一躍時代の寵児となったキックボクサーだ。”ライジング・サン”日菜太とも2度闘ったことで、日本での知名度も高い。

 今回の王座決定戦でも下馬評はリスティに傾いていた。無理もない。空手出身のキリアは胴回し回転蹴りを多用するなど立体的な攻撃で目立った存在ながら、ペトロシアンやロビン・ファン・ロスマーレンには敗れている。案の定、最初にダウンを喫したのはキリアの方だった。2回、キリアが左フックを打ったモーションに合わせてリスティが放ったカウンターのヒザ蹴りをまともにアゴに食らってしまった。完璧な一撃だった。ヒザ蹴りを打つ瞬間、リスティは右手をキリアの後頭部に添えたぐり寄せるようにして打っていた。キリアは立ち上がってきたものの、リスティの初防衛は時間の問題のように思われた。

 しかし、この一戦はタイトルマッチとして組まれたため、試合時間は3分5ラウンド。いまやキックボクシングの世界ではスタンダードになりつつある3分3ラウンド制に慣れているリスティにとって、4ラウンド以降も試合が続くことは大きな誤算だった。 以前から他の選手に「リスティはスタミナに問題があるのではないか」と指摘されていたが、案の定3ラウンド2分過ぎからいきなりペースダウン。試合の主導権をキリアに奪われてしまったのだ。それでもチャンスと見るやカウンターのヒザ蹴りをボディに決めるなど、リスティはのらりくらり凌いでいるように見えた。 もうひとつ、リスティにとって大きな誤算があったとするなら、それはキリアの体の強さだろう。その証拠にリスティが再三放っていたボディへの膝蹴りにも顔色ひとつ変えることはなかった。ジムメイトであるセミー・シュルトとの練習が活きたのだろうか。 クライマックスは5ラウンド1分30分過ぎに訪れた。最終ラウンドになってもスタミナの切れないキリアが放った左フックをもらうや、リスティはおぼつかない足どりとなり、スタンディングダウンをとられてしまう。その勢いでキリアは右フックで2つめのダウンを奪う。とどめは右をもらって思わず背中を向けてしまったリスティの斜め後ろから放った左フックだった。このビッグショットでリスティは大の字になってしまった。 ペトロシアンからリスティに政権が交代してからわずか4カ月、チャンピオンという形で新たに頂きを制覇したのは、グルジア出身でセミー・シュルトのジムメイトである伏兵だった。

他のランカーは色めき立ったことだろう。現在、ライト級では日本人ファイターとして唯一ランクインする(6位)日菜太にも十分チャンスはあるのではないか。

 また、今大会の目玉のひとつであるミドル級王座挑戦者決定トーナメントも大荒れだった。GLORY全米進出のキーマンのひとりダスティン・ジャコビーは初戦で、今回GLORYデビューを迎えたアレックス・ペレイラの左フックの前にまさかの1RKO負け。『GLORY4』(2012年12月31日・埼玉)では日本ヘビー級王者の松本哉朗を激闘の末に下しているジェイソン・ウィルニスはイッツショータイム世界85㎏級王者だったサハク・パーパリアンのローキックによって下半身を殺され、2-1の判定で敗れた。 決勝はビッグチャンスに燃えるペレイラが1ラウンドにガードの隙間から右ストレートをクリーンヒットさせ、先制のダウンを奪う。その後パーパリアンもボディへの攻撃を中心に反撃を試みるが、ダウンによるマイナスポイントを払拭するまでには至らない。 結局、2-0の判定でペレイラが王座決定戦に駒を進めた。まだ日本ではなじみの薄い階級ながら、現在ミドル級の世界ランキングには清水賢吾(6位)とマグナム酒井(10位)が名を連ねている。彼らにもチャンスが回ってくることを切に願いたい。

 リングを観ているだけで、懐かしい感情が込み上げてくる試合もあった。地元のミルコ・クロコップがレミー・ボンヤスキーを迎え撃ったヘビー級のレジェント対決だ。『GLORY2』(2012年10月6日・ブリュッセル)で3年ぶりの復活を遂げたレミーだが、第2のファイティングロードは苦闘の連続。『GLORY5』(2013年3月23日・ロンドン)ではタイロン・スポーンに壮絶なKO負けを喫して新旧交代を印象付け、その他の試合も微妙な判定ばかり。勝っても負けても、ミルコ戦がファイナル。そう心に決めて、レミーはリングに上がった。 一方、地元の大声援を背に登場したミルコは意外にも今回がGLORYデビュー戦。キックのリングに上がるのは、ちょうど1年前、ところも同じザグレブで行なわれたK-1ワールドGP決勝以来だ。レミーとは12年前に福岡で初めて激突。まだグリーンボーイだったレミーをパンチの連打でキャンバスに沈めている。その後ミルコはMMAに転出したため、ふたりが遭遇する機会はなかった。 最初で最後の再会。引退試合のせいだろう。アウェーにもかかわらず、レミーには温かい声援が飛んだ。しかしながら、一度もフランイングダッチマンになることはできなかった。一方のミルコ。何度も十八番のハイキックを狙ったが、相手のブロックに拒まれ一度もクリーンヒットすることはなかった。筆者は手数でミルコの勝利と見たが、判定は2-1でレミー。そういえば、『GLORY13』(2013年12月21日・東京)で日本引退試合と銘打たれたアンデウソン・ブラドック・シウバ戦はレミーの勝利だと思ったのに、シウバが三者とも29-28の判定で逃げ切った。 最後も際どい判定で選手生活に幕を引く。ある意味、それもレミーらしいか。一方、僅差で敗れたとはいえ、GLORYはヘビー級の人材の宝庫。ミルコが対戦相手に困ることはあるまい。ミルコの負けず嫌いな性格からして、VSリコ・ベホーベンのような世代交代を想起させるマッチメークを組まれたら闘志を燃やすだろう。個人的にはダニエル・ギタとの”ハイキック№1決定戦”を観てみたい。

GLORYの敷居を跨げるのは選ばれしキックボクサーのみ。第三者から見たらアップセットに映る試合も、選手から見たら涙と努力と汗の結晶だ。今後、2014年のGLORYシーンはどんな色に染められていくのか。世界のキックボクシングはGLORYを中心に動いている。

時代は動いている。

スポーツライター布施鋼治

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